2017-06

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今 晃20 3本の引眉のこけし

今 晃20 引眉のこけし

 私が子供の頃に観た古い時代劇では、女優は歯を黒く塗り(お歯黒)眉を剃って(引眉)演じるのが普通だった。白黒の画面の中で観る映像は、黒い歯と眉を剃った女優が口を動かす度に、薄気味悪く感じ子供心に異様に映っていたことを思い出す。
 最近では三谷幸喜の映画「清須会議=2013年に公開」の中で鈴木京香がお市の方、剛力彩芽が織田信忠の奥方松姫に扮し、引眉とお歯黒で役を演じていた。

今晃20-1(引眉こけし)

 今日、紹介するこけしは今さんの作品で、大きさは4寸である。昨年の8月、ヤフオクに今回のこけしと同手の物が2本、3本と纏めて何組か出品されていた。その中の1組を落札したものである。3本とも眉を薄墨で描いていおり、何時頃の作かも、原の有無も分からないまま、その中から1本だけ出し棚に飾り眺めていた。

今晃20(引眉こけし)

 その後、私と同じ時期に落札したと思われるこけしが、「こけし千夜一夜物語Ⅱ124夜(2016年10月3日)」で「引眉こけし」と題されて紹介されているのを見つけた。その中では木村弦三のコレクション中にある島津彦作のこけしを原にしていると思われることや「引眉」の意味や歴史にについて語られていた。

今晃20-2(引眉こけし)

 最近、「木おぼこ・今晃」(2017年3月18日)の中に、「こけし千夜一夜物語Ⅱ124夜」で紹介された引眉こけしについて取り上げられ大いに参考になった。本作は平成元年5月23日に作られた島津彦作型で、この時以外に薄墨で引眉を描いた彦作型は作っていないことや今さん自身は引眉こけしを作った経緯について記憶が曖昧になっていることなどに触れられている。
 
 このグロテスクにさえ見える今さんの引眉こけしについて、靄がかかっていた謎の部分が少しだけ解けたことで、愛着と面白味が増して行くことを感じた。

こけしの話332

テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用

今 晃19 松山庭園美術館2

今 晃19 松山庭園美術館2

 千葉県匝瑳(そうさ)市の松山庭園美術館の館長である此木三紅大(コノキ ミクオ)氏は昭和12年に東京都の北区に生まれ、今年で80歳になる。中学1年から油絵を始め、18歳の時には独立展に入選し、武蔵野美術大学卒業後にローマの美術大学に留学している。
 此木三紅大氏の作品を収蔵する「那須高原 私の美術館」のHPのプロフィールを読むと、若くして注目され、作品は具象、抽象を問わず、絵画・彫刻・ステンドグラス・陶芸などジャンルの幅が広いことが分かる。

今晃19-2

 先月、第14回「猫ねこ展覧会2017」を観るために松山庭園美術館を訪ねた時には、此木先生は大きな身体を折り曲げるようにして広い庭の中で黙々と草取りをしており、微笑ましく感じた。また、この美術館には猫が何頭も飼われている。その猫達が時々テレビで放映されることがあり、広い庭を歩き回る猫、展覧会の会場の椅子に乗り悠々とお昼寝をするネコなどを見るのを楽しみに来場する人もいる。

今晃19-1

 今日、紹介する今晃さんのこけしは、大きさが7寸5分で、制作時期は昭和62年2月である。段のついた肩に細長い胴は裾が少し広がっている。白い木地に墨彩画のように紅い梅の花が正面に3輪、側面に1輪描かれている。

今晃19-3

 頭は少し面長で、胴とのバランスが良い。顔は長い眉と切れ長の眼、鼻は2筆で細長く描かれ、口は少し開いている。このこけしは細く切れ長の眼から怒りを含でいるような印象を持ったが、時々、机の上に置いて眺めているうちに、観る角度によって円空仏のように微笑んでいるように感じるようになった。

こけしの話331

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今 晃18 新緑の松山庭園美術館

今 晃18 新緑の松山庭園美術館

 千葉県匝瑳(そうさ)市にある松山庭園美術館を訪ねた。第14回「猫ねこ展覧会2017」を観るためである。いつもの年は5月に入ってから行くことが恒例になっていたが、今年は展覧会の初日(4月21日(金))に行くことにした。入口で入館料を払い、長屋門を潜ると庭園には芽吹きはじめたヤマモミジやふっくらと軟らかそうな黄緑色の苔の中に、此木三紅大(コノキ ミクオ)氏が制作したユーモラスな顔をした石像が何体も置かれている。

今晃18-2

 幸運にも、今年はいつもより早い時期に出掛けたので、自然の環境に近い状態で栽培されているアツモリソウやアマドコロなど、春に咲く山野草に出会うことができた。

今晃18-1

 今日、紹介するこけしは今晃さんの作品で大きさは8寸2分、造り付で肩が張っており、胴の中ほどが少し括れている。白い木地の裾のあたりに上に向かって口を開けたように、咲き出そうとする赤い花が1輪描かれている。牡丹の花だろうか。頭は小さく先端が尖っていてバサッとした髪形をしている。墨一色で描かれた顔は人間味のある表情しており、どことなくユーモラスで親しみが伝わってくる。

今晃18

 松山庭園美術館では様々な作家が描いた猫の絵、此木氏のユーモラスな彫刻や絵画、庭の樹々をゆっくりと眺め、活力を頂いてきた。

 家に戻ってから、今さんのこけしを何本か机の上に並べてみた。そしてそれらを眺めながら、今さんのこけしと此木氏の彫刻や絵画の世界には「童心」という言葉が一番良く似合うと私は改めて実感した。

こけしの話330

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高橋精志16 ぺっけ

高橋精志16 ぺっけ
  
 私がこけしを集め始めたのは昭和52年ごろからである。当時、伝統こけしの入門書などを本を読むと、各系統の特徴やこけしの歴史、用語の解説などからはじまるものが多かった。
 小さな造り付のこけしに関して、「こげす(遠刈田)」「たちこ(鳴子)」「太子型(土湯)」など、形態の違いや呼び方の違いがあることを知ったのもその頃である。弥治郎では5、6寸の造り付で胴の中程が括れていて、裾が広がっている形をしたこけしを「ぺっけ」と呼んでいた。「ぺっけ(べっけ)」の意味を深く追求したことはないが、鹿鳴館時代に洋装をした婦人を模して作られたこけしだと言われている。

高橋精志16-1

 今日、紹介するこけしは高橋精志さんの作で大きさは6寸である。製作時期は胴底に62歳と記されているので昭和49年か昭和50年頃の作品である。造り付の胴には赤と緑、紫の3色でロクロ線が引かれ、染料が少し滲んでいる。頭の中心が赤色、外側が紫色のベレー帽を被り、前髪は描かれず大きめの赤い房飾りが3つ付いている。顔は一重瞼に大きな撥鼻で、二筆の口は小さく、頬紅が薄っすらと塗られ愛らしい。いかにも小倉嘉吉系の流れをくむこけしに仕上がっている。

高橋精志16

 この、精志さんのこけしをいわき湯本駅前のお土産屋さんで見つけたときには、伝統こけしの入門書から得た、覚えたての「ぺっけ」という言葉が頭に浮かび手に取ったことが鮮明に蘇る。姿形が典型的なぺっけであり、鮮やかな色彩の精志さんのこけしが脳裏に残っている。
 今、あらためて眺めてみると、軟らかい木肌にロクロ模様の染料が少し滲んでいる。あまり気にはならないが、最初に出会った時から滲んでいたのだろうか、それとも時間の経過とともに徐々に滲み出してきたものなのだろうかと、記憶を辿ってみたが思い出せない。40年の時が流れ、当時の鮮明な記憶と朧気な記憶が入り混じっていることを、この精志さんが作ったぺっけを眺めながら楽しんでいる。

こけしの話329

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岩本芳蔵9 本人型

岩本芳蔵9 本人型

 今日(4月8日)は香取神宮の桜を観に出掛けた。桜は満開だったが冷たい雨が降られ、鳥居を潜り参道の入口を少し歩いただけで引き返した。その後は何時ものように仲見世の一つ「うのcafe」に寄り、昔懐かしい中華ソバとコーヒーを注文した。今日は桜の花よりも暖かいものが欲しい1日になってしまった。

岩本芳蔵9-2

 今日、紹介するこけしは岩本芳藏作の本人型で制作時期は不明ではあるが昭和20年代後半と想像する。大きさは1尺で、やや肩の張った胴の上部と裾に赤と緑のロクロ線が引かれ、大きな牡丹の花が4輪描かれている。椀型の頭頂の蛇の目は中心が黒い丸、その外側を赤い中太、一番外側を太い黒い線で描いている。前髪と横髪が描かれ、横髪は耳が隠れるほどの長さで下部をリボンのように赤い紐結んでいる。顔は丸鼻にキリット結んだ口、目と眉は左右大きく離れ、細く湾曲した三日月型をしている。陽に焼けて褪色も進んでいるが、少しアンバランスな雰囲気が私好みである。

岩本芳蔵9-1

 芳藏さんが作る本人型や善吉型のこけしの目は、細い目、ギョロッと見開く大きい目、ほとんどが上下に膨れた紡錘形をしており、三日月型はあまり見かけない。

 私のブログ、こけしの話296(2016年8月7日)と327で紹介しているが、芳藏さんは磯谷直行型のこけしを作ったことがあり、その目は三日月型をしている。
 
岩本芳蔵9
 
 私の空想の世界だが、芳藏さんと父善吉との確執は心の中に何時までも深く残っていた。そして芳藏さんの少年時代に兄のように慕い、木地を教えてくれたことがある磯谷直行の早すぎる死を思い出すたびに寂しさがこみ上げて行く。その時に芳藏さんは父が作ったタコ坊主の大きな目を拒み、直行型の細い三日月型の目を描くことがあったのではないかと、このこけしを眺めながら迷想することがある。

こけしの話328

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