2017-11

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佐藤誠7 古型

佐藤誠7 古型

 私がこけしを集め始めた昭和52、3年頃、佐藤誠さんのこけしを土湯のアサヒ写真館で何本か購入している。その当時は昭和40年前後の作品でも今(ヤフオクなど)のように安くはなかったように記憶している。

佐藤誠7-1

 今日、紹介するこけしは佐藤誠さんの作品で大きさは8寸3分、製作時期は昭和44年1月ごろ、胴底に本人の達筆な文字で古型と記されている。胴の上部が括れ、丸みのあるやわらかなフォルム、胴模様は赤と緑の染料を使い、細い線と太い線を組み合わせてロクロ模様が引かれいる。少し角ばった大きめの頭で、顔は頬紅が薄っすらと残っており、涼し気な目に二筆の赤い口が微笑んでいるように描かれ愛らしい。

佐藤誠7

 この佐藤誠さんのこけしを眺めていると、佐藤光良氏の小説集「父のこけし」の最後の章が浮かんでくる。

 「工房は家の裏側につぎたされたかたちで作られていて、十畳ほどの広さのその内部の右側には、こけしの原木がこまぎれにされて堆積していた。(中略)部屋のぐるりにもさまざまな工具類がかかっていてにぎやかだったが、描彩のための絵皿、小筆、スズリ箱と見ていって、その絵皿に紅が付着し、スズリのくぼみに墨がまだのこっているのを目にしたときには、胸をつかれた。思わず、父をここにもう一度すわらせてみたい、子の私に、こけしを挽くところを見せてもらいたい、と思った。(中略)その白い顔にどのように目をかき、眉をひき、頬紅をさすのか見せてくれ、親父よ、と思ったものである。
 だが、そのときはもう、父は命をおとしていた。知らないのは父の家に戻っていた私たちだけだった。」

 この一節は、仕事中に倒れ意識のない父を家族や高橋精志さんと共に病床を見舞い、昏々と眠る中、今日は大丈夫だろうと、その夜遅くに父の住んでいた平泉の工房を訪ねる。父の仕事場に立ち、想いを馳せているときに、病院から、父誠が息を引き取ったと知らせが入った。
 
こけしの話338

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佐藤誠孝4 いわきの工房にて

佐藤誠孝4 いわきの工房

 「木地処さとう」には何度か足を運んでいるが佐藤誠孝さんとは言葉を交わした記憶がない。玄関先で会釈を交わしたことはあるが、いつもは仕事場に籠って仕事をしているのだろうか。職人が持っている気むずかしい気質だと思えば余り気にはならない。奥様の美喜子さんに居間に通され、お茶をご馳走になりながら、誠孝さんの修業時代のことや震災の頃、息子達の工人としての成長など、いろいろな話題を聞かせて頂きおもてなしをして下さることで満足である。

佐藤誠孝4-1

 今日のこけしは「木地処さとう」の二代目である佐藤誠孝さんの誠型で、大きさは8寸である。胴底に鉛筆で昭和52年6月と記載されているので50年代前半の作品と思われる。

佐藤誠孝4

 森亮介氏と佐藤兄弟のこけしの制作に関しての交流は昭和53年の秋ごろからはじまった。このこけしは森亮介氏からアドバイスを受けはじめる前の作品と思われる。

 佐藤光良編・著の「技の手紙 森亮介のこけし追求」を読むと、昭和53年11月ごろの誠孝さんのこけしに対し「顔の表情が若い」という表現があるが、あらためて本作をみてみると初々しさが残り頷けるような気がする。

佐藤誠孝4-2

父誠と二代目の誠孝のこけしを並べてみた。父は息子の作ったこけしをみることはなかった。

 「技の手紙」を改めて読み返していると、その中に佐藤光良氏から誠孝さんの奥様の美喜子さんに送った手紙があり、こけし工人として成長して行く過程で気になっている内容なので引用してみる。

「 美喜子さんへ
 いろいろ大変と思いますけれど、あなたの夫君は、いま人生の最大の岐路に立っていますので励ましてやって下さい。
 東京の森さんという方に従(つ)いての工人生活は、もしかしたら夫君を少し変えるかもしれません。たとえば、いままでとはちがって少し気むずかしくなるとか……。
 でもそれは、すぐれた工人に育つためですから、一緒に、いましばらく困難に立ち向かって下さるようおねがいします。
 これまでも大変でしたし、御苦労も多かったでしょうが、これからは万事、苦労が実る方向にすすむと思われますので、私からもお願いする次第です。
 子どもたちを大切に。                    光良」
 
こけしの話335

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佐藤誠6 後継者

 佐藤誠6 後継者

 私はいわき市に工房を構える「木地処さとう」を何度か訪ねている。いつも感じるのだが、誠孝さんと誠工人のイメージがダブってしまう。それは佐藤光良さんの小説集「父のこけし」に登場する父(誠工人)と現在の誠孝さんが年齢的に近く、誠工人の古い写真と今の誠孝さんの顔が良く似ているせいだと思っている。

佐藤誠6-1

 今日は佐藤誠工人の2寸8分の小さなこけしで、制作時期は不明である。
 戦中に、こけしの材料が不足したことからエナメルを使って描いた時期があり、このこけしも染料ではなく顔料を使っているのでその頃のものかも知れない。特にあざやかな筆使いで描いた菊の花と緑色の葉は、触れると顔料の厚みが指先に伝わってくる。そして緑色の葉は毒々しく見える。

佐藤誠6

誠治(誠孝)は照れくさそうに笑い、
「そんじゃ、やってみっか」
といった。
ぼそりとしたその声は、私の気のせいではなく、生前の父(誠)のそれによく似ていた。
やがて、小屋にはロクロの音が鳴り、木くずがあたりにとびちった。

「佐藤光良作品集・父のこけし」の中の「初挽き」より

佐藤誠6-2

 今は次男の誠孝夫妻と2人の息子(孫)と4人で「時間・手間・工人の思い」をたくさん込めたこけしをいわきの地で作っている。晩年も郷里に戻ろうとしなかった工人佐藤誠は「木地処さとう」の今を想像していただろうか。(右から祐介、誠、英之)

こけしの話334

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佐藤誠5 梅吉型こけし

 佐藤誠5 梅吉型こけし

 佐藤誠は昭和34年に家族と再会する。

 時が流れ、光良は急に父のこけしが気になり「私は、ほんとうに父のことを語ってはこなかったのではあるまいか。」深夜に押入れのおもちゃ箱を探す。「さがしていたこけしは、散乱するおもちゃに埋もれるようにしてころがっていたのである。」

 「父が復元したという故藤井梅吉型は、白木地、無彩の、清楚で静かなたたずみをかもすこけしである。顔のある梅吉型でさえも、赤、青、黄、緑、紫などのロクロ模様で色どられるにぎやかな弥治郎系こけしとはきわめて対照的であり、顔の微笑みもどこかひかえめで、寂しげだ。」佐藤光良作品集・父のこけしより。

佐藤誠5-4

 今日は佐藤誠工人の藤井梅吉型を紹介する。大きさは6寸4分で角ばった頭、黒一色の蛇の目、前髪や手絡は描かれていない。無彩の胴は首が緩く動きキナキナのような形態をしている。制作時期は不明ではあるが昭和40年代の作と思われる。

佐藤誠5-3

 数奇なこけし工人佐藤誠とその家族を描いた小説、「佐藤光良作品集・父のこけし」のページを捲ると佐藤誠が作った梅吉型の口絵(私のブロゴに掲載していないので恐縮だが)がある。本作のこけしとその口絵を比較すると角ばった頭部は、より平頭になり横鬢は太く短い。目は三日月型ではなく、なだらかな傾斜の小山を思わせる三角形の眼に黒目が大きく描かれている。梅吉型の復元をはじめて間もない時期のものかも知れない。無骨な魅力がある。

こけしの話333

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佐藤裕介8 誠型のこけし

佐藤裕介8 誠型のこけし

 国道の渋滞を避け脇道を走ると田植えが始まっていた。田圃の中に田植え機が入り作業をしている。この風景を見ると季節の移り変わり感じる。植えたばかりの稲は細く弱々しいが、根付いて5月に入り気温が上がってゆけば、根が土の中の栄養を吸収し分蘖(ぶんげつ)期に入り株が別れが始まり逞しく成長する。

佐藤裕介8-2

 前回のブログで「木地処さとう」で使っている赤城産のこけしの原木に触れた。東日本大震災の時に放射能の影響を避けいわき市から群馬に避難していたことがあり、それが縁で群馬産のミズキの原木を送って頂いたと。その話題から3日後の4月13日に、九州地方を震度7の激震が襲った。最近、地震や大雨などの自然災害が以前より増えているように感じるのは気のせいだろうか。

 5年前に経験した東日本大震災を振り返ると、私は発電所の復旧に追われ昼夜を問わず働き、休日は乗用車の給油に並び食料や電池を購入するために奔走した。津波の被害が少なかったので震災から1ヵ月が過ぎたあたりから生活や仕事が落ち着きを取り戻し始めたように記憶する。

佐藤裕介8-1

 震災の緊張した生活から平静に戻り行く中で、何故か心の中にポッカリと穴のようなものが空いてしまったように感じた。その穴を少しずつ埋めたくて、私は「こけしの話」のブログを始める切っ掛けになった。こけしや風景の写真を摂り拙い文章を考え5年の歳月が過ぎようとしている。

佐藤裕介8

 前回に続き今日のこけしも佐藤裕介作で大きさは6寸、制作時期も前作と同じ平成25年7月である。祖父、誠型のこけしで造り付の太い胴をしており、かなりボリューム感がある。裾と襟にロクロ模様が引かれ、襟と裾の間に2輪の菊の花が手慣れた筆で描かれている。スーッと鼻筋が通り、ほんのりと淡い頬紅、点の様に紅い小さな口が品良く澄また顔に映っている。

こけしの話285

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