2018-06

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阿部平四郎6 初期の泰一郎型

阿部平四郎6 初期の泰一郎型
 
 6月に入った。1年の折り返し点が近づいている。最近、時の流れを速く感じてならない。

 今日、紹介するこけしは阿部平四郎さんの泰一郎型で、胴底には昭和33年7月「初作」と記されている。泰一郎型の復元を依頼されて世に出始めたころの作品であろう。大きさは8寸で、段が付いた肩、胴は緩やかに裾に向かって広がり、緑と赤の染料を使って着物の衿を描き、井桁模様の前垂れを締めている。顔の雰囲気が良い。一筆目は少し湾曲しており、小さく二筆で描いた口は微笑んでいる。 

阿部平四郎6-1

 阿部平四郎さんは、昭和22年に横手市の工業高校(機械科)を卒業し、高橋兵次郎の弟子になり、翌23年10月まで指導を受けた。その後1年ほど自宅で木地を挽いていたが、昭和24年より秋田県大湯の奈良靖規の工場に勤め、茶筒や新型こけしの下木地を挽いていた。昭和25年に警察予備隊に合格、10月22日に入隊し、一時木地から離れた。
 昭和27年に警察予備隊を除隊し、川連の自宅に戻り木地挽きを再開した。最初は横手市の中山人形の木地を挽きながら、ほんの少しだけこけしを作っていたという。

阿部平四郎6

 泰一郎型の復元は、昭和33年5月に、こけし蒐集家の大浦泰英氏に依頼されたことが、その始まりといわれている。平四郎さんが木地師として転機となった年であり、こけし工人として大きく一歩を踏み出した時でもある。

 この、こけしを机の上に置いて眺めている。少し淡い赤と緑の染料で描く着物の線がぎこちなく、前垂れの不揃いな井桁模様に初々しさを感じる。29歳という後戻りできない年齢にさしかかった平四郎さんとって、泰一郎型の復元という新たな目標を得た喜びが、このこけしの微笑みとなって「心の内側」を写しているような気がする。

こけしの話362

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今 晃26 2018年の松山庭園美術館

今 晃26 2018年の松山庭園美術館

 先日、涼しい日を選んで、千葉県匝瑳(そうさ)市の田園の中、松山庭園美術館を訪ねた。第15回「猫ねこ展覧会2018」を開催しており、この季節に訪ねることが我が家の恒例行事のようになっている。入館料を払い、門の中に一歩足を踏み入れると、新緑のヤマモミジとふっくらとした苔の庭が出迎えてくれた。

今晃26-2

 庭園の中には、この美術館の館主の此木三紅大(コノキ ミクオ)氏が制作した石像やガンダ(ガラクタ?のようなものを素材にした)彫刻と呼ばれる作品が何体も置かれ、それらを眺めながら「猫ねこ展」入選作や審査員の作品が展示してある会場までゆっくりと歩を進めてゆくと、美術館の飼い猫が姿を見せる。

今晃26-1

 今日、紹介するこけしは今晃さんの作品で大きさは7寸、制作時期は昭和61年7月で、造り付の細めの胴に濃い紫色の染料でアザミの花が一輪描かれている。ザンバラ髪の頭は小さく、顔は墨一色で描かれ、眼点が打たれた目は右側(左目)の方が細く、二筆の鼻と口も小さく単調に見え、何処にでもいるような人間ポイ表情に映っている。

今晃26
 
 この松山庭園美術館で此木氏の作品を鑑賞していると、「童心」という私達が何処かに置き忘れてしまった記憶が蘇ってくる。そして、それを取り戻せるなら取り戻したいと思う。

 今さんのこけしを眺めながら、時々、同じことを想うことがある。

こけしの話361

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荒川洋一104 油絵芳藏

荒川洋一104 油絵芳藏

 先日、筑波山に登り、たくさんの春の花(口絵はキクザキイチゲ:菊咲一華)との出会いを楽しむことが出来た。山頂付近では風が強く、咲き残った山桜の花が散り、花吹雪の中を歩いた。

荒川洋一104-2

 先月23日に会津若松市湊町の荒川洋一さんの工房を訪ねた。直接こけしを譲って頂くことが訪問の目的ではあるが、もう一つ過去にネット等で入手した作品について、少し教えて頂きたいことがあり、我が家にあるこけしを何本か持参していた。

荒川洋一104-1

 今日、紹介するこけしは、その中の一つで、中屋氏旧蔵品の写しの芳藏型である。制作時期は平成16年で胴底には初作と記され、大きさは8寸3分である。胴の上下に赤と緑の染料でロクロ線が引かれており、その中に鮮やかな色の牡丹の花が3輪咲いている。顔は太い眉の下に切れ長の目、瞳は黒く大きい。2筆?の鼻が力強く描かれ、紅を差した口はキリット結ばれている。
 ザクザクとした前髪で、太い眉と大きく切れ長の目との間隔が狭い。不自然なくらいに。それがこのこけしの大きな特徴であり、強い印象となって記憶の中に残るのかも知れない。

荒川洋一104

 荒川さんに、この芳藏型の復元に関し、「誰の依頼で、そのころの原の持ち主は等。」当時のことを伺ったが、少し間をおいてから「思い出せない。」という回答が返ってきた。そして、「このこけし、何と呼んだら良いですか。」との問いには「油絵だ。」という答えが直ぐに返ってきた。本当は「○○さんに頼まれて、□△型と呼んでんだ。」という答えを聞きたかったのに。

 荒川さんが最初にこのこけしの原を観た時に、何処か顔がバタ臭く感じたのか、それとも油絵具を塗ったよな筆使いに思えたのか?私は、その理由を聞きそびれてしまい後悔している。

 荒川さんは「油絵芳藏」の近作(四つ切の写真)と見比べながら、この平成16年の初作と記された芳藏型を「こっちの方が良いな。今のはデフォルメ、し過ぎた。」と呟いておられた。

こけしの話360

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荒川洋一103 武井型善吉

荒川洋一103 武井型善吉

 朝方、肌寒い風が吹いていた。我が家の南側の庭ではイブキジャコウソウの花が咲き始めていた。ウォーキングに出ようとした足を止め、バックからカメラを出し、小さなピンクの花の塊を写真に収めた。

荒川洋一103-2
 
 会津若松市湊町に工房を構える荒川さんを訪ねたのは先月の23日である。今日、紹介するこけしは、その時、譲って頂いたもので、「この型は、あまり作らないから。首が長いんだ。」と言って、先日、紹介した亥一型と同じように、いつものこけしが入っている箱とは別に奥様が出して下さった作品である。

荒川洋一103-1

 武井型の善吉で大きさは5寸2分である。上差し込み型(頭を胴に差し込む)ではあるが胴と頭がピッタリとくっ付く構造ではなく、差し込みを少し長く削り、5mmぐらい首が見えるように作ってある。角張った顔に、立派な獅子鼻が置かれ、短く湾曲がない眉と目がアンバランスに見えユーモラスに仕上がっている。

荒川洋一103

 荒川さんの武井型復元の歴史は古い。昭和47年に善吉型の復元を願い出て、師芳藏から作ることを許された同じ年に、蒐集家(都筑祐介氏)の勧めで武井武雄版画集の「こけし愛藏図譜」の中に掲載されている善吉型の復元が始まった。その時以来、高い評価を得て、翌年には武井版画の復元作が、三寸という小寸にもかかわらず「鳴子のこけしコンクール」で入賞を果たしている。

 オヤジ顔の武井型善吉は、幾つか持っているが、この首の長い神妙な顔付をした善吉は初めてであり、季節が夏に変わるころまで机の上に置いて毎日眺めていたいと思っている。

こけしの話359
 

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荒川洋一102 氏家亥一型の謎

荒川洋一102 氏家亥一型の謎

 先日(3月23日)、会津若松の荒川さんの工房を訪ねた。白河から国道294号線を会津方面に向かうと3つのトンネルがある。トンネルを1つ超えるごとに雪が深くなって行く。世間では桜の開花が話題になっている時期に、荒川さんが住む会津若松市湊町周辺は、まだ、山も水田も一面の雪に覆われていた。
 
荒川洋一103-2

 出迎えて下さった荒川さんは、屋根から落ちて背丈より高く積もっている雪を指さし「融けて消えるのは、あと一ヶ月は掛かるかな。5月の連休ぐらいだ。」と仰っていた。

荒川洋一102-1

 今日、紹介するこけしは氏家亥一型である。玄関で挨拶し居間に通されると、お茶よりも先に奥様が「新しいの、お父さんが作ったから。」と言ってビニールの袋に入った亥一型こけしを出して下さった。

 大きさは5寸8分で、胴に比べ頭が大きく、三日月形をした眉と目に写実的な鼻が描かれ、口はキリット結んで品の良い顔をして、胴模様は赤と紫の染料でロクロ線が引かれている。

 荒川さんがお茶を飲みながら、このこけしについて説明をして下さった。原の胴模様は、赤色のロクロ線しか残っておらず、会津若松にある技術支援センター(ハイテクプラザ)に分析を依頼して調べてもらったが、何色の染料を使っていたか解析出来なかったという。そこで、荒川さんは赤い染料でロクロ模様を復元し、赤と赤の間に残った白木地に、想像で紫の染料を使ってロクロ模様を入れて完成させたという。

荒川洋一102

 この、亥一型の写しは、前髪や横鬢が難しかったという。理由は筆使にある。一般のこけし工人の筆と異なり「(善吉作と言われることもあるが)技法的に日本画の心得がある工人が描いた。」ものではないかという疑念が生まれていると仰っていた。
 
 2年前(平成28年)に荒川さんの工房を訪ねたときも、蒐集家のK氏に依頼された尺1寸の氏家亥一型のこけしを前にして「髪の描き方が違うな。」と呟いていたことをも思い出す。

荒川洋一102-3

 以前「こけしの話245」で紹介した平成19年作の氏家亥一型と並べてみると、髪の毛を描いた筆使いの違いが歴然としている。巷では「写楽の謎」で盛り上がることがあるように、「亥一名義のこけしは誰が描いたのか?」という話題で盛り上がる日が来るかも知れないと、勝手に夢想しながら眺めるのも面白いと想った。

こけしの話358

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